2011年12月28日水曜日

デフレから脱却できないのは、生活水準の切り下げだからだ

ブルームバーグより
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LWSCX307SXKX01.html
12月27日(ブルームバーグ):パナソニックの本社がある大阪府門真市。オガワ・セイヤさんは週3回、同市の職業安定所に自転車で通う。息子の大学最終年度の学費や生活費を賄うため、職探しを続けているからだ。

オガワさん(49)は「もうこういう状況ですから、仕事があればなんでも良い」と語る。かつて製造業で栄えた大阪市郊外の門真市で、電子回路基板を組み立てていた。職業安定所に登録してから今月で1年になる。「失業してから長すぎる。なにか人間性が否定されているような気になってくる」と話す。

オガワさんと息子は、妻と娘の収入が頼りだ。日本ではこのような社会的な立場の逆転が広がりつつある。工場や建設会社が人員を解雇し、女性中心のサービス業が採用を拡大しているためだ。新たに創出される仕事の平均賃金が低いため、野田佳彦首相はデフレ脱却に向け消費を刺激しすることが一段と難しくなっている。一家の大黒柱としての負担が増えているため、女性が早く結婚して子供を産むという意欲がそがれている。日本は既に先進国で最も早いペースで高齢化が進んでいる。

第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは、企業の海外移転加速や人口減で、建設の仕事が増加する可能性は低くなっており、こういった産業は以前のように男性労働者を吸収できないと 指摘。その結果、名目賃金は下がり続けており、この「マンセッション(男性不況)」は当分終わりそうもないとの見方を示した。

国の誇り

日本経済は国が誇りとする「ものづくり」から、64歳以上の高齢者2900万人を対象とした介護を中心とするサービス業への転換が進んでいる。人材サービス会社、リクルートのワークス研究所によると、男性が10人中7人を占める製造業・建設業は、この10年で400万人の雇用が失われる見通しだ。厚生労働省のデータによると、女性が74%を占める医療分野の雇用は過去3年間で16%増と、全産業で最も速いペースで拡大している。

円が戦後最高値付近で推移する中、この産業構造の変化は加速している。パナソニックやソニーなどの輸出業者の利益が円高で吹き飛んでおり、政府に変化を和らげるような時間的余裕はない。パナソニックは今年度、過去10年間で最大の損失を予想しており、ソニーは損失を900億円と見込んでいる。

パナソニックの株式は年初来で45%安、ソニーは53%安、その結果TOPIXは20%安となっている。一方、部屋数で介護施設運営2位のメッセージは1.6%高、施設数で1位のニチイ学館は25%高だった。

「日本の未来」

米プロスペクト・アセット・マネジメントの創業者、カーティス・フリーズ氏は、介護や医療などのサービスは「日本の未来だ」と述べた。メッセージは雇用対策で従業員の離職コストを削減できる可能性があるため、プロスペクトが運用する3億ドル(約234億円)の資産に同社株を追加することを検討しているという。一方、製造業は「リストラの最中にあり、苦戦するだろう。雇用の大半を担うのはより小規模のサービス企業だ」と指摘した。

厚生労働省によると、2010年に雇用されている人のうち女性の割合は42%と、データが比較可能な1973年以来最高となった。73年は38.5%だった。

日本の労働人口では女性の割合が増えつつあるが、企業の人員削減が進む中、他の先進国でも同様の変化が見られている。経済協力開発機構(OECD)のウェブサイトによると、昨年のOECD諸国の男性の失業率の平均は8.5%、女性は8.1%だった。2000年は男性が5.8%、女性が6.8%と、女性の方が高かった。

失業率格差

昨年の日本の失業率は男性が5.4%、女性は4.6%となり、格差は過去最大水準に拡大した。ワークス研究所によると、失業率は20年までに男性が7.1%、女性は5.9%になる見通しだ。

門真市のさびついた閉鎖工場近くに住むオガワさんにとってこれは先行きの暗さを示している。工場はかつて日本全国から労働者が集まり、パナソニック本社と共に栄えていた。オガワさんによると、景気停滞を受け、オガワさんの息子や娘のような20代の若者の態度は変化している。若者は稼いだ金を消費するより貯金するという。

「自分が仕事一つ見つけられない状況で、彼らに目標を高く持ってとは言いづらい」とオガワさんは話す。「私が楽しんだ若き良い時間を彼らにあえて話そうとは思いません。彼らが理解できるとはとても思えない」。

引用終わり

つまり、今までのように男は雇えないのだ。
男は一家の大黒柱であるとの上で、過去の公務員が作ったモデルは、この20年で全ての民間には当てはまらなくなった。

男を雇うと金がかかる。使い道は危険な力仕事や汚れる仕事のみであるが、すでにそういった仕事は合理化の果てにきれいなIT化がずいぶんと進んだため、人が居なくても何でも作れてしまうのだ。
ロボットなどの合理化が進まないのは単純な労働集約作業(掃除、接客など)もあるが、それも「ロボットのほうが盗難・破壊などリスクが高い」という理由で人を選んでいるに過ぎない。

なぜ、そうなったのか?理由は簡単。人に払うべき人件費を合法的に切り下げるべき法律を作り、立法化した挙句、その浮いたお金は投資家、銀行へ配当・利回りとして掠め取られるに至ったからだ。
だから企業は、将来の利払いのため余剰資金を内部留保としてリスクヘッジをしているのだ。

小泉改革後、未だに人件費云々とTPPであがるのは、改革できなかった公務員を民間のように所得水準を切り下げ、余剰資金を利回り・配当として未来永劫日本から掠め取ろうとしている金融屋が居るからに他ならない。そうなれば、最終的にギリシャが陥っているように国内世界遺産から国立公園、水源地、企業が合法的に負債の糧として強奪されることになる。

公務員の税金食いにはあきれるが、公務員が民間と同じ所得水準になっても決して余剰資金は国内に還流しないのは、明らかである。
全ては金融ビッグバン時、財政投融資による国内への資金還流を国外への資金還流へと変えたことが始まりであった。

TPPともなれば、国内法では海外企業を裁けなくなる。仮にTPPを利用した日本企業が、国外から日本に進出しても、国内法では裁けない。彼らは「同胞の笑顔を持つ悪魔」として最もたちの悪い企業となり、日本人を食いつぶすだろう。「成りすまし日本企業」の誕生である。

そういった「成りすまし日本企業」に国内の税システムが及ぶことは無い。TPP賛成日本企業の全てが、日本法規の及ばない「成りすまし日本企業」として日本国内へ再進出することを望んでいるからだ。

かつて、日本人個人が法律上の外国人として、日本に外国人として生活することを望んだ。彼らの銀行口座は非居住者口座と呼ばれ、日本人よりも税システム上優遇されていたため、成りすまし外国人として税務署からのチェックの対象になった。TPPでは労働力の移動も交渉に含まれている。成りすまし外国人は今後増えることになるだろう。

TPPはある意味ハルノートであったのかもしれない。
そうであれば、戦いを選ばずに負けたのかもしれない。